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日豪社会保障協定で年金はどう通算される?駐在の5年と現地採用で分かれる加入先

Tips · 2026-11-01 · 9 min read

メルボルンの明るい部屋で、ノートパソコンとお茶をそばに置き、給与明細と年金の書類を見比べる日本人女性。

日豪社会保障協定は、日本の年金とオーストラリアの退職年金保障制度(superannuation guarantee、以下「スーパー」)に二重で加入しないようにし、日本の年金の加入期間とオーストラリアの期間を通算するための協定です。ただし通算できるのはオーストラリアの老齢年金(Age Pension)との間だけで、スーパーの期間は日本の年金に足せません。日本の会社から5年以内の予定で派遣される人と、オーストラリアの雇用主に現地採用される人とでは、入る制度がはっきり分かれます。

この記事では、オーストラリアで働くことを考えている日本の方に向けて、協定のしくみを立場ごとに整理します。数字と決まりは、日本年金機構、外務省、オーストラリア税務署(Australian Taxation Office, ATO)、Services Australiaの公式情報で確かめたものだけです。

日豪社会保障協定とは

正式な名前は「社会保障に関する日本国とオーストラリアとの間の協定」で、外務省は短く「日・豪社会保障協定」と呼んでいます。日本年金機構の案内では、署名は2007年2月27日、発効は2009年1月1日です。

日本年金機構の協定の一覧では、オーストラリアとの協定は「期間通算」と「二重加入の防止」の両方を定めた協定として載っています。二重加入の防止の対象になるのは、日本の公的年金制度と、オーストラリアのスーパーです。

オーストラリアのATOも、日本を二国間の社会保障協定がある国として挙げ、開始日を2009年1月1日、適用証明書(certificate of coverage)の期間の上限を5年としています。

原則は「働く国の制度に入る」

外務省の協定の概要では、協定の基本の考え方は、働く人は働いている国の年金制度だけに加入する、というものです。その例外が、雇用主から一時的に派遣される人です。派遣の期間が5年までなら、派遣元の国の制度だけに加入します。

オーストラリアとの協定には、もう一つ大事な点があります。日本年金機構は、5年を超える見込みの派遣でも、最初の5年間は相手国の制度が免除され、それより長い延長は両国が一件ずつ合意して決めるとしています。

駐在員の場合

日本の会社に雇われたままオーストラリアに派遣される人は、日本の年金に入ったまま、オーストラリアのスーパーが免除されます。そのときに使う書類が適用証明書です。派遣が決まったら、誰がいつ申請するのかを、勤務先の担当者に早めに確かめておきましょう。

現地採用の場合

日本年金機構は、協定のある国で現地採用された人は、その国の社会保障制度だけに加入するとしています。オーストラリアの雇用主に直接雇われ、ビザスポンサーを受けて働く人は、日本から派遣される駐在員とは違い、スーパーの対象になります。

ATOが示す一般的なスーパーの拠出率は、2026年7月1日から2027年6月30日までの期間で12.00%です。給与明細にスーパーの欄があるかどうかは、毎回確かめておきましょう。帰国するときのスーパーの受け取り方は、スーパーアニュエーションの返金DASPのガイドで順番に説明しています。

自営業の場合

日本年金機構は、オーストラリアで自営業として働く人は、協定の加入の決まりの対象外で、適用証明書も要らないとしています。協定でオーストラリア側の対象になっている制度が、従業員向けのスーパーだけだからです。

立場ごとの違いを表で見る

立場加入する制度適用証明書気をつけたいこと
日本の会社からの派遣(5年まで)日本の年金だけ使う最初の5年を超える延長は両国の個別の合意が必要
オーストラリアでの現地採用オーストラリアのスーパーだけ使わない日本の国民年金を続けるかは自分で決める
オーストラリアでの自営業協定の加入の決まりの対象外要らない協定の対象は従業員向けのスーパーだけ
ニュージーランドで働く日豪協定は使えない対象外日本とNZの間には協定が発効していない

「通算」で足せるのは老齢年金だけ

「通算」という言葉から、スーパーで積み立てた期間も日本の年金に足せると考える人がいます。けれども日本年金機構のオーストラリアとの協定の注意点のページは、オーストラリアには税金でまかなう社会保障制度と、掛け金でまかなうスーパーの2つがあり、日本の年金の期間と通算されるのは社会保障制度だけで、それも老齢給付に限られると説明しています。

Services Australiaは、協定を使ってオーストラリアの老齢年金(Age Pension)を受けるには、オーストラリアでの居住期間と日本の加入期間を合わせて少なくとも10年必要だとしています。オーストラリアの外に住んで請求する場合は、ふつう少なくとも12か月のAustralian Working Life Residenceが必要で、そのうち6か月は一続きの期間でなければなりません。

ここで言う「Australian residence」は、オーストラリアの市民か永住ビザを持つ人として住んでいた期間を指します。技能不足ビザ「Skills in Demand ビザ(サブクラス482)」のガイドで説明しているとおり、482ビザで働く人は、雇用主が永住のサブクラス186(Employer Nomination Scheme)でスポンサーできる場合もあります。自分の期間がどう数えられるかは、Services Australiaの協定の案内(英語)で確かめてください。

日本を出るときの国民年金

現地採用で働く人は、日本の年金のことも自分で決める必要があります。杉並区は、国民年金の第1号被保険者が海外転出の届出をすると、加入の義務がなくなると案内しています。海外に住んでいた期間は合算対象期間(いわゆるカラ期間)として受給資格の期間には数えられますが、年金額には反映されません。

年金額を増やしたい人には、在外任意加入があります。大田区の案内では、20歳以上65歳未満で日本に住民登録がない日本国籍の人などが対象で、申し込んだ月から加入でき、さかのぼることはできません。日本にいる親族が協力者として通知を受け取り、保険料を払う形が使われます。

出国前にそろえる書類は、日本で準備する就労ビザの必要書類のチェックリストにまとめています。

渡航前に確かめる順番

  1. 自分の立場を決める:日本の会社からの派遣か、オーストラリアの雇用主による現地採用か、自営業かを、雇用契約の書面で確かめます。
  2. 派遣なら適用証明書を確かめる:派遣の予定期間が5年以内か、誰が適用証明書を申請するかを、勤務先の担当者に聞きます。
  3. 現地採用ならスーパーを確かめる:契約書と給与明細で、スーパーの拠出が書かれているかを見ます。482ビザの年収基準の記事とあわせて、給料の条件も確かめておきましょう。
  4. 国民年金の扱いを決める:海外転出の届出のあと、カラ期間のままにするか、在外任意加入で払うかを選びます。
  5. 記録を残す:パスポート、雇用契約、給与明細を保管します。杉並区も、年金を請求するときに海外にいた期間を確かめられることがあるとして、パスポートを保管するよう案内しています。

たとえばバンダバーグのメンテナンス技術者・フィッター(Maintenance Technician / Fitter)の求人のように、オーストラリアの雇用主に直接雇われる仕事なら、現地採用の扱いになります。応募の前には、日本での職歴を英語で説明できるように、Build AI CVで英文CVを整えておくと準備が進めやすくなります。JobsAbroad Japanでは応募は無料です。

ニュージーランドには協定がない

日本年金機構の一覧には、日本と社会保障協定が発効している24か国が載っていますが、ニュージーランドは入っていません。日豪協定の「5年までの派遣」や「期間通算」の決まりは、ニュージーランドでの仕事には使えません。クライストチャーチのフィッター・ターナー兼溶接工(Fitter / Turner and Welder)の求人のようなニュージーランドの仕事を考えている人は、年金の扱いを別に確かめましょう。

オーストラリアに住んで日本の年金を受け取るとき

将来、オーストラリアに住みながら日本の年金を受け取る場合、日本年金機構は、租税条約に関する届出書(様式9)を2部、日本年金機構の本部に出すと、その年金は日本ではなくオーストラリアで課税されるとしています。問い合わせ先として、Services Australiaは日本年金機構の本部(+81 3 6700 1165)と、Centrelink International Services(オーストラリアの外から+61 3 6222 3455、国内から131 673)を挙げています。

よくある間違いと避け方

  • スーパーの期間を日本の年金に足せると思う:通算できるのは老齢年金(Age Pension)との間だけです。スーパーは別に手続きします。
  • 現地採用なのに駐在員と同じ扱いだと思う:オーストラリアの雇用主に直接雇われた人は、オーストラリアの制度だけに入ります。
  • 派遣の延長を自動だと思う:最初の5年を超える延長は、両国の個別の合意が必要です。
  • ニュージーランドにも協定があると思う:日本とニュージーランドの間には、協定は発効していません。
  • 国民年金を何もしないまま出国する:カラ期間は受給資格には数えられますが、年金額には反映されません。在外任意加入にするかを出国前に決めておきましょう。

帰国前のスーパーの確認には、DASPでいくら戻るかと未払いの確かめ方の記事も役に立ちます。

よくある質問

日豪社会保障協定があれば、日本の年金とスーパーの期間を足せますか?

足せません。日本年金機構は、日本の年金の加入期間と通算されるのはオーストラリアの社会保障制度だけで、それも老齢給付に限られると説明しています。スーパーは通算の対象ではないので、スーパーはスーパーとして、出国時の手続きなどを別に考える必要があります。

日本の会社からオーストラリアに3年間派遣されます。スーパーは払われますか?

協定では、雇用主から一時的に派遣される人は、5年までなら派遣元の国の制度だけに加入するのが原則です。日本の年金に入ったまま、オーストラリアの退職年金保障制度(superannuation guarantee)が免除される仕組みで、そのときに使う書類が適用証明書です。手続きは、勤務先の担当者と日本年金機構の案内で確かめてください。

オーストラリアの会社に直接雇われた場合、日本の年金はどうなりますか?

日本年金機構は、協定のある国で現地採用された人は、その国の制度だけに加入するとしています。オーストラリアではスーパーの対象になります。日本の国民年金は、海外転出の届出で加入の義務がなくなりますが、条件を満たせば在外任意加入で払い続けることもできます。

ニュージーランドで働く場合も、同じ協定が使えますか?

使えません。日本年金機構が載せている、日本と社会保障協定が発効している24か国の一覧に、ニュージーランドは入っていません。ニュージーランドで働く場合の年金の扱いは、日豪協定とは別に、日本年金機構などの公的な案内で確かめる必要があります。

オーストラリアの老齢年金(Age Pension)を日本から請求するには、何年必要ですか?

Services Australiaは、協定を使う場合、オーストラリアでの居住期間と日本の加入期間の合計が少なくとも10年必要だとしています。オーストラリアの外に住んで請求するときは、ふつう少なくとも12か月のAustralian Working Life Residenceが必要で、そのうち6か月は一続きの期間である必要があります。

まとめ

  • 日豪社会保障協定は2009年1月1日に発効し、二重加入の防止と期間通算を定めています。
  • 日本の会社からの派遣は5年まで日本の年金だけに入り、適用証明書でスーパーが免除されます。
  • 現地採用はオーストラリアのスーパーだけに入ります。
  • 通算できるのは老齢年金(Age Pension)との間だけで、スーパーは通算されません。
  • ニュージーランドとの間には協定がありません。

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