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移民を減らせば暮らしは良くなる?オーストラリアの移民上限争いと日本人が知っておきたいこと

News · 2026-09-21 · 6 min read

シドニーの街並みを望む明るい工房で、機械部品を囲んで協働する日本人の男女3人。

オーストラリアでは今、移民の数が政治の大きな争点になっています。主な3つの政党が、純海外移民数(net overseas migration, NOM)の目標をどこまで低くするかを競うように打ち出しました。ただ、到着する人の数に上限をかけること自体は、経済の戦略とは言えません。本当の問題は、今の移民の増加より前から続いている生産性の伸び悩みで、移民を減らしても解決しない、という見方があります。

オーストラリアで働くことを考えている日本の方にとっても、この議論の行方は気になるところです。数字の背景と、どんな人に影響が出そうかを順に見ていきます。

数字で見る「移民が多すぎる」という不安

3月までの年間の純海外移民数は約392,700人で、そのうち約292,100人分の増加が移民によるものでした。世界金融危機の後からコロナ前までの平均を大きく上回り、それより前の数十年と比べてもかなり速いペースです。直近の4年間では、平均で年に約400,000人、1日あたり約1,100人が増えた計算になります。

その間に住宅価格も上がりました。全国の中央値はこの期間に大きく上昇し、都市の渋滞も目に見えてひどくなっています。ここまでは誰も否定していません。意見が分かれているのは、何が原因なのかという見立てです。

各政党が掲げる数字

政党掲げている数字考え方
One Nation3年間は純移民数をマイナスにし、その後は約130,000人を上限にする大きく減らしてから厳しい上限をかける
保守連合(Coalition)約170,000人完成する住宅の数に合わせる(「移民ひとりに新しい家をひとつ」)
労働党(Labor)今年度245,000人、翌年度225,000人財務省の予測を、そのまま目標として示す

こうした数字は、きちんとした計画というより、有権者の怒りに反応したものだという指摘があります。混んだ電車や上がる家賃は目に見えますが、企業の設備投資の弱さや生産性の停滞は見えません。そのため有権者は見えるものに反対し、政治はその情報のすき間を埋めるどころか利用している、という見方です。

しわ寄せはどこへ:技能移民と一時滞在者の違い

注目したいのは、3つの政党とも技能移民は維持するか、むしろ増やしたいと考えている点です。削減の対象になるのはほぼ、一時滞在の人や技能を問わない働き手です。具体的には、オーストラリア人がやりたがらない農場の仕事と、政府が公的な資金を減らしてきた大学を支える留学生です。働き手の不足を解決しないまま移民を減らせば、農業や高等教育で新しい人手不足が生まれる、という懸念があります。

日本の読者にとっては、ここが一番大事な点かもしれません。ワーキングホリデーで農場の仕事をしている方や、これから行こうと考えている方は、一時滞在の受け入れが絞られやすい流れの中にいます。一方で、雇用主のスポンサーを受けて働く技能移民の道は、どの政党も残す姿勢です。

ワーキングホリデービザ(Working Holiday visa)は、雇用主によるビザスポンサーとは別のビザです。長く働きたい方は、自分の技能と経験を生かせる仕事で、雇用主がスポンサーになる道を早めに調べておくと安心です。季節の仕事を探している場合は、Seasonal Jobs Australiaで農場や収穫の求人を見ることもできます。

カナダが選んだ別の道

オーストラリアの移民に関する発表の2日前、カナダは似た政治的な圧力に対して、まったく違う手を打ちました。到着する人の数に上限をかけるのではなく、生産性を高めるための政策をまとめて出したのです。

中心になるのが「Productivity Mega Deduction」です。対象となる設備投資を初年度に経費にできる割合を、15%から65%へ大きく引き上げます。対象はデータ基盤やソフトウェアから、パイプライン、鉄道、道路、航空機、研究開発の資産まで幅広く、政府は新しい投資にかかる実効税率が約13%から6.4%へ、ほぼ半分になると見込んでいます。あわせて「one project, one review, one year」という基準を設け、大きな事業の承認を、重複していた連邦の手続きではなく、期限を決めたひとつのまとまった審査で判断する仕組みにしました。

もっとも、カナダはアメリカとの貿易関係の悪化と高い関税に追い込まれての対応です。オーストラリアにはそうした外からの衝撃はなく、あるのはゆっくり進む生産性の問題です。だからこそ、見過ごされやすいとも言えます。

本当の課題は生産性

国民ひとりあたりの生活水準が下がっている本当の原因は、人口の大きさではなく生産性の弱さだ、という指摘があります。2010年以降、GDPは年に約2.4%伸びてきましたが、ひとりあたりのGDPはわずか0.5%しか伸びていません。実質の可処分所得もほとんど増えず、年によってはマイナスになりました。移民の数は目に見えて数えやすいので悪者にされがちですが、会議室で決まる企業の投資は表に出にくいのです。

カナダの試みがうまくいけば、オーストラリアにとってのお手本になるかもしれません。移民を難しくするのではなく、投資を安くし、承認を速くする。経済の成長とひとりひとりの豊かさの両方を望むなら、移民の数を小さくするより、そちらのほうがずっと必要だという主張です。

移民の数をめぐる議論は、純海外移民数(NOM)の基本を解説した記事や、保守連合の移民上限案が技能労働者に与える影響を取り上げた記事でも詳しく扱っています。スポンサー付きの仕事は、オーストラリアのビザスポンサー付きの求人から探せます。

よくある質問

移民の上限は、もう決まったのですか?

各政党が、それぞれの目標や案を掲げている段階です。最終的にどの数字になるかは、今後の政治の動きによって変わる可能性があります。

技能ビザで働きたい人にも影響はありますか?

3つの政党とも、技能移民は維持するか増やしたいとしています。削減の対象になりやすいのは、主に一時滞在の人や技能を問わない働き手です。ただ、制度は変わることがあるので、申請の前に最新の情報を確かめてください。

ワーキングホリデーには影響しますか?

議論の中では、農場の仕事を担う一時滞在の働き手がしわ寄せを受けやすいとされています。ワーキングホリデーで渡航を考えている方は、今後の政府の発表に注意しておきましょう。

カナダの政策は日本人に関係がありますか?

直接の関係はありません。ただ、オーストラリアが今後、移民を減らす方向と投資を増やす方向のどちらに力を入れるかを考えるうえで、比べる材料になります。

まとめ

  • オーストラリアでは、主な政党が純海外移民数の目標の低さを競っています。
  • どの政党も、技能移民は維持するか増やしたいとしています。
  • しわ寄せは一時滞在の働き手や留学生に向かいやすく、ワーキングホリデーで農場の仕事をする人にも関わります。
  • 本当の課題は移民の数ではなく、生産性の伸び悩みだという見方があります。
  • 長く働きたいなら、雇用主によるビザスポンサーのある仕事を早めに調べておきましょう。

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