犯罪歴の共有は見送り、それでも照合は続く:オーストラリアやNZを目指す日本人が知っておきたいこと
News · 2026-09-28 · 5 min read

オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、英国、米国の5か国は、自国民の犯罪歴(有罪判決)のデータをお互いに共有する計画を、いったん止めました。審査がゆるくなったように聞こえるかもしれませんが、そうではありません。何が共有され、何が共有されていないのか。日本からオーストラリアやニュージーランドで働くことを考えている方に向けて整理します。
Migration 5(M5)とは
この5か国は、移民の分野で協力する枠組みとして「Migration 5(M5)」と呼ばれています。各国の首脳は2026年4月に、自国民の有罪判決のデータをやり取りする構想の作業を止めることで合意しました。
検討されていた案
M5の今の仕組みは、移民の手続きのための身元情報を中心につくられていて、犯罪歴を扱うものではありません。この仕組みで有罪判決の記録がニュージーランド警察に渡されることはなく、加盟国が自国民の情報を交換することもありません。
その後の話し合いでは、もっと範囲の狭い案が検討されました。匿名化した指紋データを使い、各国の警察や犯罪記録のシステムに照会するという案です。ニュージーランドは、今の法律では、外国の機関が移民の目的で同国の警察や裁判所の有罪判決データを見る根拠がないと判断しました。ニュージーランド移民局(Immigration New Zealand, INZ)は、この検討の段階で生体情報や有罪判決の記録はやり取りされていないと説明しています。担当の作業部会は、2025年3月のオンライン会合のあと、正式には開かれていません。
止めたのは関心の薄れではなく法律
計画が止まったのは、やる気がなかったからではなく、法律の壁があったからです。各国にはそれぞれプライバシーと犯罪記録のルールがあり、他国の国境管理の機関が国内の司法のシステムをのぞくことを、自動的には認めていません。同じ構想がまた動くとしたら、まず各国の議会が法律を変える必要があります。
今も続いている情報のやり取り
「見送り」は「情報共有がない」という意味ではありません。M5の国々は、指紋などの生体情報と身元情報の自動照合を今も続けています。ニュージーランドは2010年代のはじめから、英国を除くほとんどの相手国とこうした取り決めを結んでいます。2025年5月には品質管理の枠組みで合意し、2026年のはじめに最初の年次の見直しが始まりました。ニュージーランドの2025年分の見直しでは、プライバシーの侵害、システムへのアクセスの安全上の問題、相手国への誤った開示や不適切な開示は見つかりませんでした。
数字で見る照合の規模
ニュージーランドの公的情報法(Official Information Act)にもとづいて公開された数字から、この仕組みがよく使われていることがわかります。
- オーストラリアからニュージーランドへ:2026年4月までの1年間に1 million件を超える旅行者データの照会があり、指紋が一致したのは676件でした。
- ニュージーランドからカナダ、オーストラリア、英国へ:それぞれ約4,000件の照会があり、一致はそれぞれ383件、340件、283件でした。
- カナダと米国:両国からの照会の数字は黒塗りにされ、ニュージーランドから米国への照会は、国際関係を理由に公開されませんでした。
照会の数に比べて一致はわずかです。この仕組みは幅広くふるいにかけて、ごく一部を拾い出す道具だということがわかります。拾われるのは、多くの場合、以前に他の加盟国の移民当局の記録に残った人だと考えられます。
日本から申請する方が気をつけたいこと
- どの書類も正確に書く。身元情報はすでに共有されているので、名前、生年月日、渡航歴の食い違いは、別の国の審査で見つかることがあります。名前のつづりは、どの書類もパスポートのローマ字表記にそろえましょう。
- 犯罪歴を聞かれたら申告する。有罪判決のデータの直接の交換がなくても、ビザの申請では警察の証明書と人物に関する申告を求められるのが一般的です。日本からの申請では、日本の犯罪経歴証明書(Police Certificate / Certificate of Criminal Record)を求められることがあります。うその申告は、ビザの不許可や入国禁止につながることがあります。
- 今回の見送りは一時的なものと考える。法律の枠組みが変われば、各国はこの構想を見直すことができます。
- 記録を整理しておく。過去のビザ申請、不許可の記録、渡航の書類は、身元情報が国をまたいで動くほど大事になります。以前のワーキングホリデービザも含めて、申請の履歴をまとめておきましょう。
- 複雑な事情があれば専門家に相談する。過去に有罪判決やビザの不許可がある場合は、申請の前に登録移民エージェントや移民法の弁護士に相談してください。
ニュージーランドの制度の動きはニュージーランドの移民制度の見直しをまとめた記事、審査のシステムの問題はビザのシステムの不具合を取り上げた記事でも説明しています。どの申請でも同じ職歴を示せるよう、任意ですがTalent Tabloidの確認済みプロフィールで経歴を整理しておく方法もあります。
よくある質問
犯罪歴の共有が止まったなら、審査はゆるくなりますか?
そうではありません。指紋などの生体情報と身元情報の照合は今も続いていて、よく使われています。申請で求められる警察の証明書や人物の申告も、これまでどおりです。
今も共有されているのはどんな情報ですか?
M5の国々は、生体情報と身元情報の自動照合を続けています。ニュージーランドは2010年代のはじめから、英国を除くほとんどの相手国とこうした取り決めを結んでいます。
書類の名前のつづりが少し違うだけでも問題になりますか?
名前、生年月日、渡航歴の食い違いは、国をまたいだ照合で見つかることがあります。どの書類もパスポートのローマ字表記にそろえておくと安心です。
この計画がまた動き出すことはありますか?
可能性はあります。止まった理由は法律の壁なので、各国が法律の枠組みを変えれば、構想が見直されることもあります。
まとめ
- M5の5か国は、自国民の犯罪歴データを共有する計画を2026年4月に止めました。
- 止まった理由は、各国のプライバシーと犯罪記録の法律です。
- 指紋などの生体情報と身元情報の照合は、今も活発に使われています。
- どの申請でも、正確で一貫した情報を出すことがいちばん安全です。
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